マーケティングミックス(4P)

売上は営業一部門が頑張るかどうかではなく、全社的な取り組みで作り上げるのがマーケティングである。マーケティングミックスとはそのために会社内の各部門をどのようにミックス(組み合わせる)のかの考え方を表したものであり、代表的なのが4Pである。

マーケティングという考え方が起こった背景には、産業革命以後続いてきた「作れば売れる時代」が終わり、その結果起こった「作ってもそのままでは売れない時代」になったことにある。売り上げ不振はもはや営業一部門の問題ではなく、企業は生き残るために、プロダクト(市場調査によって消費者がどんな製品が望まれているかを把握し開発)し、プライス(買いやすい価格と支払い方法を設定)し、プレイス(消費者が買いやすいよう流通ルートを開拓し、プロモーション(商品のことを良く知り、買いたくなるように宣伝)することが必要になった。

このプロダクト(Product)・プライス(Price)・プレイス(Place)・プロモーション(Promotion)の4つのP(4P)について戦略的にどう組み合わせどう行っていくのかを考えるのがマーケティングミックスである。

マーケティングミックスの起こり

20世紀初頭「作ってもそのままでは売れない時代」に入り、なんとかして売り上げを上げるために次の5つの分野について研究が始まったのがマーケティングミックスの起こりと言われている。

広告

最も初期に発展したのが広告による宣伝である。このため、マーケティング=広告宣伝という誤解が生まれたとも言われている。作ってもそのままでは売れなくなったのだから、どうやったら買う気にさせるかということが重要視された。そのためにどう製品の情報を伝えるか、情報提供・教育・説得・宣伝及び洗脳などの方法について研究されるようになった。

信用

信用とは、現金ニコニコ払いではなく、割賦販売(分割払い)やローンや後払いなど信用取引を行うこと。購買客が買う気を止める理由の一つに支払いの負担があるため、その負担を減らす方法について研究がなされた。

セールスマンシップと販売管理

それまでの行き当たりばったりな販売方法でなく、科学的に客観性のある販売方法について研究ななされた。

セールスマンシップとは、販売に関わる技術全般のこと。その範囲は営業担当者・販売員として身につけるべき商品知識や技術に始まり心構え・外見や態度・人間的な魅力やモラルまでも含む。今でも営業というと、主観的な個人の資質に頼った目先の利益のみを追求した“押し売り、押し込み、哀訴嘆願・恐喝”をする行為というイメージがあるが、そうではなく科学的に効果が分析され、教育訓練や研修を通じて身に付けられたスキルであり、自分の利益の追求ではなく相手に満足を提供する技術と言える。

流通施策(小売業と卸業)

どんなに良い商品だったとしても、購買客に買う機会が訪れなければ売上は立たない。また、百円ショップで売っているような商品を百貨店で展開するといった間違った流通ルートを取ると売れない。従って、商品に適した購買の機会を管理し、購買客に適切な刺激を与えるための演出が重要であり、どのお店で売るか、またその売り方について研究がなされた。また当時は現在のように物流が発達していなかったため、小売店までの適切な流通ルートとして卸業についても研究がなされた。

市場調査

市場調査そのものはマーケティングの起こりのかなり初期から行われていたが、当時はこの地域ではどんな商品どれくらいが売れるかというったものが主流であった。つまり今ある商品をどう売るかということを調べるためのものであった。しかしその後、時代が変化するにつれて、顧客の潜在的なニーズの把握など商品を開発する前にも行われるようになった。

4Pの考え方はマーケティングを考える上で重要なツールである。しかしコンパクトにまとまりすぎているが故に誤解も多いので、あえてこのマーケティングミックスのおこりについて記述した。 “モノづくり日本”という言葉に惑わされているのか、未だ技術先行の商品開発が横行している。このことはこれまで大手企業の協力会社として部品を製造してきた企業やI T企業で顕著である。商品は市場調査の上企画されるべきである。またプライスと一言にまとめられてしまっているので、価格設定しか考えられていない。本来は支払い方法も含めての価格設定を考えなければならない(例えば、プリンターのように本体価格は低めにして、インクなど継続購買される部品は高めに価格設定するなど)。さらに頭文字がPで始まる言葉でまとめようとした結果、セールスマンシップについての定義が曖昧になり、「マーケティングの目的は、販売を不要にすることだ」というドラッガーの言葉が一人歩きしてしまっているため、営業について誤解を強めているようである。マーケティングと営業は別物ではない。特に最近主流になりつつあるサービスマーケティングやリレーションマーケティングにおいてはセールスマンシップは重要なファクターである。

4つのPの順番について

当初提唱者であるE・J・マッカーシーの著書では、4Pはプロダクト・プレイス・プロモーション・プライスの順であった。商品があり、それに流通コストと宣伝コストを加えた上で価格は決められるからというのがその理由である。現在一般的に使われる4Pはプロダクト・プライス・プレイス・プロモーションの順に並んでいることが多いが、それは商品と価格が先に決められ、それに合わせて流通政策と広告宣伝がなされるからである。

この二つの4Pの順番については、どちらが正しいとかいうことでなく、例えばキミングプライシングやペネトレーションプライシングといった、その商品の価格戦略によって決まるものである。

スキミングプライシングの場合

スキミングプライシングのスキミング(skimming)とは、「上澄みをすくい取る」こと。製品の市場投入時・導入期に高価格を設定し、高収益力を確保するための価格設定することで、対象市場全体の上澄みである富裕層などの「高くても買ってくれる顧客」を狙った戦略のことである。良くあるのは通販番組で取り上げられる商品の多くはこの戦略であり、最初番組に登場したときは価格が高く、売れ続けるにつれて価格が下がってくる。そのほかにはベンチャー企業が開発したこれまでにない画期的な技術などもこのスキミングプライシングをとることが多い。この場合は、コストの回収と十分な利益を勘案して価格が決定されるので、マッカーシーが提唱した順番で考えることになる。

ペネトレーションプライシングの場合

ペネトレーションプライシングのペネトレーション(penetration)とは、「浸透する」こと。導入期から一気に市場への早期普及を図り、成長カーブに乗せることを目的とする価格設定のことである。また市場の支配率を上げることで参入障壁を作るということも目的として設定される。この場合は最初に価格ありきであるため、一般的に使われる4Pの順番で考えることになる。

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